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第 13 回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議のまとめ

第13回有識者会議(令和8年1月7日)資料の要点整理

― 育成就労制度の実務・事業影響の観点から ―

本会議では、2027年開始予定の新制度「育成就労」を前提に、分野別の受入れ方針および受入れ見込数が具体化された。制度設計の骨格が固まりつつあり、今後の事業計画・投資判断・人材戦略に直接影響する内容である。特に実務上、押さえておくべき論点は以下の5点である。


1. 受入れ見込数の全体像(向こう5年間の枠組み)

政府は、令和10年度(2028年度)末までの外国人材の受入れ見込数を、全分野合計で約123万人と設定した。
この数字は、単なる人手不足の補填ではなく、生産性向上や国内人材確保策を講じたうえでもなお不足する分として積み上げられている点が重要である。

内訳は以下のとおりである。

  • 特定技能1号(令和6~10年度の5年間):約80.6万人
  • 育成就労(令和9~10年度の2年間):約42.6万人

分野別では、工業製品製造業、建設、飲食料品製造業の3分野で受入れ枠が突出しており、今後も主要な受入れ先となる見込みである。

  • 工業製品製造業:約31.9万人
  • 建設:約19.9万人
  • 飲食料品製造業:約19.5万人

2. 転籍制限期間の整理(1年と2年の線引き)

育成就労制度では、原則として本人意向による転籍(転職)が認められる設計となっている。一方で、分野ごとに「転籍を制限できる期間」が設定され、企業の人材定着戦略に大きな影響を与える。

転籍制限が2年とされる分野は、育成に時間を要する分野や、地方から都市部への流出リスクが高い分野が中心である。

  • 介護、建設、工業製品製造業、飲食料品製造業、自動車整備、造船・舶用工業、資源循環

一方、転籍制限が1年とされる分野は以下のとおりである。

  • ビルクリーニング、リネンサプライ、農業、漁業、宿泊、外食業 など

なお、転籍制限を1年超に設定する分野では、受入れ企業側に対して昇給などの処遇改善を含む定着施策が求められる。単に「縛る」設計ではなく、処遇改善とセットで制度が設計されている点は実務上の重要論点である。


3. 日本語能力要件の引き上げ(入国前A1相当が原則)

育成就労制度は、最終的に特定技能1号への移行を前提とした制度であるため、日本語能力についても入国前から段階的な要件が課される。

  • 入国前:原則としてA1(N5相当)以上の試験合格、または認定機関による相当講習の修了が必要
  • 就労中:1年経過時や制度終了時(原則3年)に、技能評価試験と併せて日本語試験の達成が目標設定される

これにより、企業側には「現場で使いながら覚えればよい」という発想ではなく、計画的な日本語教育の設計・支援体制の構築が実質的に求められることになる。


4. 育成就労が設定されない分野の存在

すべての分野で「育成就労 → 特定技能」というルートが用意されるわけではない。
以下の分野は、育成就労を経由せず、特定技能のみでの受入れとなる。

  • 自動車運送業(トラック・タクシー・バス)
  • 航空分野

これらは即戦力性が強く求められる分野であり、受入れ見込数も特定技能枠のみで計上されている。特に自動車運送業は、いわゆる「2024年問題」への対応の一環として、5年間で約2.2万人の受入れが見込まれている。


5. 都市部への人材流出の実態と制度設計への反映

参考資料では、技能実習から特定技能へ移行する際、約3割(約32.8%)が都道府県をまたいで移動している実態が示された。
移動先は東京・愛知・大阪などの大都市圏への集中が顕著であり、地方の人手不足を構造的に悪化させている。

このデータは、転籍制限(特に2年制限)を設ける根拠として用いられている。
今後の制度運用では、大都市圏への過度な集中を抑制する観点から、地方でのマッチング支援や、分野別協議会を通じた需給調整がより強化される方向にある。


総括(事業者が取るべき実務的示唆)

今回の会議資料が示しているメッセージは明確である。
受入れ規模は拡大する一方で、企業側に求められる役割は「受け入れるだけ」から、「育て、定着させる主体」へと質的に変わっている。

特に実務上は、

  • 自社の属する分野が転籍制限2年か1年か
  • それに伴い、どの程度の処遇改善・育成投資が必要になるか
  • 日本語教育・技能育成をどこまで内製し、どこを外部化するか

これらを前提に、採用計画・収益モデル・オペレーション設計を見直す必要がある。
育成就労制度は、単なる労働力確保策ではなく、企業側の人材マネジメント能力そのものが問われる制度へと設計が転換されたと見るべきである。

https://www.moj.go.jp/isa/03_00168.html

yushikishakaigi13

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